焙煎を行う人がコーヒーを飲む人より圧倒的に少ないせいか、あまり語られることのない生豆の保存。
これまで焙煎機は大型で高額なものが多かったのですが、業務用にも使用できる小型の焙煎機が登場したおかげで小さなロースターや自宅で焙煎を始める方が増えているそう。
きっとこの記事を見つけた方は焙煎をすでに行われているか、興味がある方だと思います。
この記事では以下を紹介します。
- コーヒーの生豆の保管方法
- おすすめの管理グッズ
私のロースターとして生豆の保管をしていた実績と海外コーヒーメディアの情報を元にしているので、ぜひ参考にしてみてください。
生豆がダメージを受ける原因
生豆の品質を保つために、まずはダメージの原因が何かを知りましょう。
・温度 ・湿度 ・光 ・酸素
これら4つが生豆の風味を損ねます。
普通の食品とそう変わらないですね。
▼温度
温度が高くなると、生豆に含まれている水の運動が活発になり、水分活性値と呼ばれる値が高くなります。
コーヒー生豆の水分活性は0.6付近ですが、温度が高くなり、値が上昇すると0.8以上でカビ、0.9以上で細菌が育つ環境になってしまいます。
焙煎によってこれらは消滅するので人体に大きな害を与えることはありませんが、風味を大きく損ねる可能性があります。
引用元:コーヒー製造におけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書
また温度変化も少ない方が良いです。
日本だとお店や自宅の気温は、夏場35℃ぐらいから冷房を入れると25℃ぐらいに、冬場は5℃ぐらいから暖房で20℃ぐらいまで大きく温度が変化します。
これらは生豆を保管してる容器や袋に結露を引き越して高い湿度の原因となって生豆にダメージを与えます。
▼湿度
高すぎる湿度に生豆が置かれると、過剰な水分を吸収し、カビが生えることがあります。
反対に低すぎると生豆自体の水分が抜けて風味が劣化することが起きます。
▼光
直射日光に当たり続けると生豆が熱されて水分が失われる恐れがあります。
正直、生豆を直射日光にあたる場所に置く人はいないと思いますが避けましょう。
建物の中でも人が日焼けするように日の光は入ってくるので注意。
▼酸素
文字通り、食品を酸化させて風味を損ねます。
生豆は焙煎豆よりも酸化の影響はそこまで大きくありませんが、使わない期間が長いほど緩やかに進行します。
おすすめの保管環境
ダメージを与える要因から考えられるおすすめの保管環境は以下の通りです。
- 温度:20±5℃
- 湿度:60%前後
- 酸素:ジップ袋(必要に応じて)
- 光 :遮光できる容器に入れる
それぞれ理由を説明します。
▼温度
生豆を取り扱う輸入業者(インポーター)は15℃の恒温倉庫に保管しているとお聞きすることがありました。
しかし店舗や自宅で15℃に設定できる設備をお持ちの方はほとんどいらっしゃらないと思います。
調べてみると室温(20~25℃)近くでも良いとする情報が多く、エアコンで十分に調整できるためこちらを設定しました。
▼温度
高すぎても低すぎても良くない範囲60%前後が目安のようです。
生豆を置く部屋に湿度調節できる除湿機があると簡単にコントロールできるのでおすすめです。
▼酸素
一ヶ月程度で使い切ってしまえるならそこまで気にする必要はありません。もしジップ袋をお持ちであれば酸素を断った良い状態で保管できます。
おすすめのジップ袋はecotactです。
会員登録が必要ですがサイズ展開が豊富で何度も使えるので助かります。
生豆販売されている企業によっては小分けでこちらにあらかじめ入れた状態で送ってくれるところもあります。
▼光
なんでも良いので遮光できるもので生豆の入った保存容器・袋を覆ってあげると良いです。
店舗/自宅で保管するイメージ
これまでいかに生豆へのダメージを減らすかについて解説してきましたが、全部取り入れるのは簡単であはありませんよね。
そこで実際に店舗/自宅で保管するなら、どこまで取り入れるかを考えてみました。
店舗
平置きで保管する
大型のロースターだと生豆が大量にストックできる冷蔵庫をもっているところもありますが非常にまれです。
ここまで色々と解説してきましたが、コーヒーロースターは特に何も対策をせず平置きしているところも珍しくありません。
使用サイクルが早いから成り立っていて、生豆の状態で店舗に長く置かないようにして劣化する前に使い切るというものです。
コーヒーショップは常にお金がないので、これがベストである場合もあります。
電気代との相談ですが夏場や冬場はエアコンを入れっぱなしにして温度を20~25℃、除湿機で湿度を60%前後にキープすると生豆にとっては快適な環境を実現できると思います。
自宅
ジップ袋に入れて冷暗所に常温保管
押し入れのように閉じた空間は湿気がこもりやすいので×
冷蔵庫は温度が2~5℃と低すぎますし、他の食品の臭いが移ったり、逆に生豆の臭いが移ることがあるので避けましょう。
ecotactがあればその中に入れて冷暗所に常温で保管できれば良いですね。
ecotactが手に入らない場合は次のような保存袋でも水分の出入りと酸化をある程度抑えられ、不透明なので遮光性もあって良いと思います。
店舗/自宅両用
ワインセラーは温度と湿度を一定に保つことができるのコーヒーの生豆の保管に使われることがあります。
しかし、温度15℃、湿度60~80%と少しコーヒーのベストな数値と離れています。
ただ少量入れるには便利なので20℃まで温度を上げられるものを選び、ecotactのように気密性が高い袋に入れておけば、かなり良い環境で生豆を保管できます。
店舗ならちょっとお高い豆だけはワインセラー+ecotactの組み合わせで保管するのもありだと思います。
自宅で少量焙煎するならこれが一番楽で良い生豆の保管ではないでしょうか。
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まとめ
コーヒーの生豆を保管する時に気を付ける条件は以下の通りです。
- 温度:20±5℃
- 湿度:60%前後
- 酸素:ジップ袋(必要に応じて)
- 光 :遮光できる容器に入れる
店舗を営業されている方は電気代が少しかかりますがエアコン+除湿機でお店に保管倉庫にできます。(人にとっても快適な環境です)
自宅で焙煎される方はジップ袋で冷暗所でも十分ですし、ワインセラー+ecotactなら完璧と言っても良いと思います。
保管方法で悩まれている方は試してみてください。
参考サイト
Perfect Daily Grind
Green Bean Storage: What Factors Do You Need to Control?
How should you store small quantities of green coffee?
How can you minimise the environmental impact of green coffee storage?
How long does green coffee stay fresh for?
INTERCONTINENTAL COFFEE TRADING
HOW TO PROPERLY STORE YOUR GREEN COFFEE BEANS BEFORE ROASTINGGenuine Origin
The Ultimate Guide to Green Coffee Bean Storage
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